てぃーだブログ › 大石林山 山だより

2024年03月22日

大石林山:「歩くガジュマル・・・騎手はキジムナーか」

「ガジマル ヤ ヤシチジュー アッチュンドー、イイランドー」という言葉を耳にしたことがある。
「ガジュマルは、屋敷中歩くから植えるなよ」という意味の沖縄方言である。

ガジュマルが歩くと言う事を聞いたとき、動物とは異なり、動き回るはずなどないという確信があっただけに驚いた。
しかし「植物は、仲間内で話しをするし、情報交換もする」という論文を読み衝撃を受けた。
そう言えば、大石林山のカルスト山で歩く姿勢をとったガジュマルを何本も見た。やはり歩くのだろうか。



マラソン大会のスタートラインか? 集合する根

ガジュマルは、クワ科の常緑樹で20㍍の大木になる。
日本を含め中国南部から東南アジア、オーストラリアにかけての亜熱帯~熱帯に分布しているが、原産地は不明である。
木の特徴は、枝や幹からヒゲのように延びた気根を垂らし、それが地面に到達すると、支柱根となり、拡がりながら樹冠を形成する。
さらに苗が他の樹上で発芽したとき、気根を出して自らの枝葉を茂らせ、挙句の果ては、寄生している樹木を絞め殺して大木に変身するという生きる術も知っている。
アコウの木とともに、「絞め殺し植物」と言われる所以だ。
気根が成長し屋敷中を歩き回り、さらに強い木の根は石垣を突き壊す、その経験からの言葉である。



歩き始めたガジュマルの根

沖縄では、ガジュマルには「キジムナー」と呼ばれる精霊が宿ると言われ、神木として扱う人もいる。
歩くガジュマルを操る騎手は、キジムナーかも。つまりキジムナーは、ガジュマルの木手(騎手)なのだろう。

大石林山で、お勧めしたい「やんばる森林コース」がある。
このコースには、数本の樹冠が30㍍を超えそうな枝振りの巨大ガジュマルがある。
いずれも四方八方へと歩きはじめたように見え、まさにアフリカの大草原のキリンの群れを見るような光景である。
百聞は一見にしかず。森林浴を楽しみながら足の数でも数えてみたらどうでしょうか。

なお、現在開催中の写真展「樹木」もあわせてご覧頂ければ幸いです。



水を求め岩下りする根、南部の「ガンガラーの谷」でのこと

(博物館名誉館長 大城逸朗)  

Posted by 大石林山 at 11:09Comments(0)自然の話題

2024年03月12日

イルカンダを近くで見よう!

珍しい花「イルカンダ」の開花シーズン到来!
やんばるの山奥に咲いていて、なかなか見ることができないことから「幻の花」と呼ばれるイルカンダ。
大自然をそのまま見学することができる大石林山であれば、そのイルカンダを近くで見ることができます。


昨年の台風の影響か、花の量はそこまで多くありませんが、小ぶりの房でかわいらしく咲いています。


また、車いすやベビーカーも通れるよう整備されたバリアフリーのコース沿いにも咲いているので、
どなたでも近くで珍しい花 イルカンダを見ることができます。


大石林山では開花のピークが予想される3月16日から「イルカンダ花めぐり」を開催します。
ぜひイルカンダを見にいらしてください。

https://www.youtube.com/watch?v=SCt4VQxsAHY

イルカンダ花めぐり開催情報
期間:2024年3月16日(土)〜4月7日(日)
入山料:大人(15歳以上)1,200円 / シニア料金(65歳以上)1,140円/ 小人(4〜14歳)600円
受付時間 9:30~16:30(閉園17:30)  


Posted by 大石林山 at 12:50Comments(0)

2024年03月11日

ポンス・ブルックス彗星

ポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)が見頃を迎えています。

といっても今はまだ5-6等級ぐらいなので、肉眼ではちょっと厳しいかもしれません。
暗い場所で双眼鏡を使うと見つけることができると思います。



このところ悪天続きでチャンスがありませんでしたが、昨日はよく晴れていたので撮影してみました。




緑色に光る彗星を写すことができました。右上方向に尾がうっすらと伸びています。
双眼鏡を覗いてみると、他の星とは違うフワッとした光が見えていました。




右上のアンドロメダ銀河(大星雲)と一緒に写してみました。

彗星は日の入り後、北西の低い位置にあります。
場所の確認はVixen社のComet Book(コメットブック)がオススメです。

4月にはもう少し明るくなりますが、高さも低くなります。
4月10日には細い月との接近もあり、どんな見え方になるのか、うまく写真が撮れるのか、ちょっと楽しみです。


参考
2024年3月 ポン・ブルックス彗星が5等前後 - アストロアーツ
2024年4月 ポン・ブルックス彗星が4等前後 - アストロアーツ



(博物館・服部)  
タグ :天文彗星


Posted by 大石林山 at 10:34Comments(0)自然の話題

2024年03月01日

第10回ミニ企画展 「不思議な土地の動きが造った森の美ー樹木」写真展を開催しています

大石林山は、沖縄島の成り立ちを教えてくれる地層からできています。
さらに大地の動きに伴い様々な生きものや樹木や草本が見られるところでもあります。

今回は、大石林山の「岩と石」、「生きものたち」に続く第3弾として「樹木」を開催することにしました。
山の地層は石灰岩からなりますので、現存植生は石灰岩地域特有のナガミボチョウジ・クスノハカエデ群落です。
森には、代表的なクスノハカエデ、シマタゴ、カジノキ、クスノハガシワなどを含め50種以上が確認されています。
(職員の又吉・山城両氏の調査、2011年)



展示風景

さらに森の中には沖縄では珍しい紅葉するハマセンダンやハゼノキ、落葉するシマタゴがあり、老化すると幹が真っ黒に変化する不思議なトキワガキなども見られます。
また吹き付ける季節風に逆らい持ち場を確保するように岩場に拡がるソテツ群落は、箱庭的な森の光景を一層印象づけるものです。



展示台の左は、珍しいソテツの縦断面、右は木の化石

植物学者によると「イネガヤ、リュウキュウキンモウワラビなどのように沖縄では本地域だけに生育する種や、ビロウドシダ、タイワンツクバネウツギ、イワヒバなど植物分類地理学上貴重な種も見られる」(沖縄大百科事典、下の423頁、沖縄タイムス社、1983年)と、注目された絶滅危惧種(危機に瀕しているもの)および危急種(危機が増大しているもの)を育む森でもあります。

貴重種は、後世に引き継ぐためにも大事に保存保護することは私達の役目でもあります。
今後とも森を守るためにご指導・ご支援を賜りたいと思います。

なお、企画展開催期間中の毎土曜日先着10名の児童生徒にブラジル産の珪化木(木の化石)をさしあげます。



毎週土曜日、先着児童生徒10名へ木の化石をプレゼントします

(博物館名誉館長 大城逸朗)  

Posted by 大石林山 at 10:55Comments(0)博物館

2024年02月14日

大石林山「森の各コースに樹木表示ができました」

石灰岩の地層が隆起してからおよそ1億年以上も陸地であり続け、想像を遙かに超えた歴史をもつ山、これが大石林山です。そして石灰岩は、空気中の二酸化炭素の影響を受けながら次第に溶け、現在見るような搭状カルストを造ったのです。

山には石灰岩特有の植生が繁茂し、各種の高木層、低木層、そして草本層が出現しています。さらにソテツをはじめとした風衝低木林も見られます。

この石灰岩の巨礫岩を包み込む林内には、整備された4コースの遊歩道があります。今回、この各コースに押し寄せるように茂った樹木の主なものに、名称とその特徴を示した標識をとり付けることができました。








山の植生を調べていただいた専門家の助言を得て実施されたものです。大石林山は「山全体が博物館」に一層充実さを増すことになりました。

おそらくヒトが最初に触れたのは、樹木でしょう。後に森から出て石(石器の使用)に触れたはずです。樹木の名前を知り、樹木に触れ、そしてこの静寂な森の中でヒトの歴史を振り返る・・・・如何でしょうか。

なお、「石の文化博物館」前の庭には、展示室で紹介できなかった岩石類を野外展示しました。合わせてご覧ください。撮影も触れることも自由です。




(博物館名誉館長 大城逸朗)  

Posted by 大石林山 at 11:41Comments(0)園内の紹介

2024年01月23日

大石林山:イノシシは、カルスト地形の功労獣か?

大石林山では、遊歩道や森の中でしばしばイノシシが目撃されている。特にウリボウは可愛げなもので、何を恐れることなく歩道に飛び出したり、車の後を追っかけたりする。野性動物を目の当たりにできる絶好の地である。

しかし親イノシシは、ドキドキしながら木陰に潜み、危機に供え猪突猛進の体勢をとっているのではないかと想像したりする。なお、ガイドさんの話では、この山のイノシシは臆病だとのこと、ご安心を。



写真1:イノシシの頭蓋の化石(港川遺跡産)

森の中へ入ると、落葉がかき分けられたり、要領の悪い人の畑のような場所を見かけることがある。山の事情に詳しいガイドによると、イノシシが餌を探して引っ掻き回した跡だという。なるほどよく見ると、ミミズを探すために土を掘り返したようで、食べ散らかしたカタツムリの殻なども散乱している。近くには、ケモノ道(獣道)や体に泥を塗りたくったヌタ場があり、憩いの場であることが容易に想像できる。


写真2:鼻はショベル代わり?ミミズ探しに夢中のウリボー君

大型動物は、島嶼化と言って、大陸から渡来し、その後分離した島々の環境などの影響で形態に特異な進化が生じ、大型動物は小型化し、小型は大型化するという法則が知られている。

「リュウキュウイノシシ」は、その小型化した典型的な動物といわれているが、大石林山のイノシシが該当するかは定かでない。なぜならヤンバルで捕獲されているイノシシの大半は、豚との掛け合わせの「イノブタ」と言われているからである。

イノシシの餌あさりやヌタ場をみて気がついたことがある。豪雨の後、近県で「イノシシが県道脇の斜面を掘り返し落石が生じた」というニュースを耳にした。そう言えば、確かにエサやヌタ場はかき乱され土壌が浮いている。雨が降れば土壌は容易に流され、川や海に運ばれ汚染の原因となる。これは自然の理である。

一方、カルスト地域においては、土壌水による石灰岩の溶食作用の一つ「溶食貫通孔」を目にすることがある。本来は、地中に有るべき「貫通孔」が地表に露出していることがある。これは明らかに降水による土壌浸食が原因である。イノシシによる土壌の攪乱は、カルスト地域での土壌浸食に影響を与えているはずである。



写真3:憩いのヌタ場では、土地がどんどん削られます

島への先住者であるイノシシの行動は、土壌流出を促す害獣とみるか、それとも「貫通孔」などを気づかせてくれるカルスト地形への功労獣と言うべきか悩むところである。

(博物館名誉館長 大城逸朗)  

Posted by 大石林山 at 13:23Comments(0)

2024年01月08日

しぶんぎ座流星群2024

毎年年明けに年間三大流星群の一つ、しぶんぎ座流星群が極大を迎えます。

ピークが鋭いので年によって当たり外れが大きく、今年は極大の時刻が1月4日の18時、夜半以降は下弦の月の影響も受けるということで2024年は外れ年と言われていました。

前日3日の夜も少し期待できたので撮影を試みましたが、電源のトラブルで開始から20分ぐらいしか撮影できていませんでした。強風でケーブルが揺れ動いて接触が悪くなっていたようです。

4日の夜は念入りに確認して撮影に望み、朝まで無事撮影できていました。

今年のしぶんぎ座流星群はいつになく活発で、予想以上に多くの流星が流れていたようです。明るい流星をたくさん写すことができました。




星の位置を合わせて合成してみました。

しぶんぎ座流星群は別名「りゅう座ι(イオタ)流星群」。りゅう座から上に流れる流星が昇り龍のように見えるでしょうか…?

今年も流星群や彗星など楽しみな天文イベントが色々あります。
少しでも晴れてくれるよう祈っています。


(博物館・服部)  


Posted by 大石林山 at 14:14Comments(0)

2024年01月01日

2024年のご来光

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。





本日、大石林山は朝7時に開園しており、アシムイから登るご来光を見に朝早くからたくさんのお客様で賑わっています。

今年は雲が多かったのですが、朝日を浴びて黄金色に輝く空を拝むことができました。





大石林山より皆様の今年一年の健康と幸福を祈願しております。  
タグ :初日の出


Posted by 大石林山 at 14:04Comments(0)自然の話題

2023年12月30日

年末年始の営業時間につきまして

大石林山は年末年始も無休で営業いたします。
9時30分〜最 終受付16時30分、17時30分閉園となっております。

1月1日はご来光参拝のため、朝7時にオープンいたします。
山の稜線からの日の出は8時10分ごろの見込みです。

  

Posted by 大石林山 at 17:56Comments(0)

2023年12月20日

ふたご座流星群2023

ふたご座流星群は年間三大流星群の一つで、毎年12月中旬にたくさんの流星を降らせる天文現象です。

今年のふたご座流星群の極大(地球が最もチリの濃い部分を通過するタイミング)は12月15日午前4時、月も新月に近いということで「8年ぶりの好条件」と言われていました。

大石林山では13日と14日の2晩、精気小屋付近にテントを張ってキャンプイベントを行いました。この時期の沖縄は寒気の影響で曇ることが多く毎回不安なのですが、今年は運良く両日とも好天となり、無事に観望していただくことができました。




極大前日、13日ははじめ快晴でしたが夜間の冷え込みが強く、霧や低い雲が出た時間がありました。それでも平均すると空の半分以上は晴れていて、21時から0時までの3時間に64個の流星を確認することができました。

その後は寝たり起きたりでカウントもやめてしまいましたが、朝までに見た流星は100個は超えていたと思います。

バリアフリーコースの第一ステージ付近にカメラを設置していましたが、この選択は誤りでした。朝になって回収に行ってみると、レンズが夜露でビッシリでした。夜露が出にくい場所に置いておけば、もっとクリアな画が得られたはずです。





ふたご座方向から流れる明るい流星



翌14日は極大日。はじめはベッタリ曇っていましたが、星空の解説を行う20時頃には雲が切れてきて、流星がチラホラ見えるようになりました。夜半前にはすっかり雲が消え、朝まで快晴でした。宿直スタッフやキャンプのお客様の話では多数の流星を見ることができ、特に明るい「火球」と呼べるものもいくつかあったそうです。

この日はバリアフリーコースの第3ステージ手前から精気小屋方向を撮影。風が吹いていたので夜露は全く無く、綺麗に撮れていました。細かいものも含めると250個ほども写っていました。





14日23時45分、かに座~しし座付近を流れた火球


10秒露光×100枚を重ね合わせ。
約17分間の中に8個の流星が写っています。


15日1時05分、おおいぬ座付近を流れた火球

この火球は沖縄タイムスに掲載されたのと同じものだと思います。大石林山と辺戸岬は距離が近いので、空の同じような場所を流れていますね。

数分に1度流れる星々 「きゃー!」天体ショーに歓声 「ふたご座流星群」、沖縄・国頭村で出現ピーク【動画あり】 | 沖縄タイムス+プラス

14日に撮影した写真はタイムラプス動画に編集してYouTubeにアップしています。






さらに15日、極大は過ぎてもまだ少し流れているので写真撮影だけ行うことに。今度はバリアフリーコースの第2ステージです。明け方に予想されていた雨を避けるため設置場所や角度が限定されてしまいましたが、この制約が良い方向に働きます。



この日は予定があって外出していて、帰りが遅くなりました。どうせなら少し眺めていこうと思い、大石林山の駐車場へ。「2~3個見えたら帰ろう、今年の見納めにしよう」と思い寝転がって流星を待ちます。

しかし5分、10分と見ていても一向に流星が現れず。晴れてはいるのですが…。「極大を過ぎるとパッタリ出なくなる」というふたご座流星群、1日過ぎただけでこんなに変わってしまうのかと痛感しました。

見始めてから15分ほど経過したとき、視界の左端をスーッと流れ落ちる白い光が。マイナス3~4等級でしょうか、かなりの明るさです。おお~火球だ~、と思っていたらパッと小爆発が起き、緑色に輝きました。流星本体は下方向に流れ落ちて消えていきましたが、爆発の箇所はしばらく光っていました。流星痕の中でも長く残る「永続痕」と呼ばれるものです。

火球が流れた方角を見ると西北西。ちょうどカメラを仕掛けたところではないですか。しかし、高さが不安でした。光り初めは写ったでしょうが、下半分ぐらいは岩に隠れたかもしれない…

とにかく、この火球を2023年の流星の見納めとしました。

翌朝、やはり雨で地面が濡れていました。カメラを回収し、その場で画像を確認。昨晩目で見た流星は、写真にギリギリ全体が写っていました。ふたご座流星群の置き土産をしっかりと受け取ることができました。



16日0時46分の火球


10秒露光×100枚を重ね合わせ



2018年ごろから流星群の撮影をしていますが、晴れた年の中では今回が一番活発だったように感じました。写真も良いものがたくさん撮れてよかったです。

来年は満月で厳しそうです。その次2025年は極大のタイミングが夕方なので、極大直後に多いという火球が多く見られるかもしれません。月齢もまずまずで要注目です。



(博物館・服部)  


Posted by 大石林山 at 14:53Comments(0)自然の話題