大石林山に霜(シモ)が降りた!?

大石林山

2021年02月24日 12:04

21日、8時ごろ散策コースの点検に入った職員が興奮気味に

「山でサクナ(長命草)が凍ってたよ!!」

と報告してきました。最初は意味がわかりませんでしたが、よくよく話を聞くと、どうも精気小屋付近で霜(しも)が発生していた模様。「写真は?」と訊くと、スマホ等持っていなかったので撮影できなかったそう。残念…!



霜とは、地面や植物の表面などに氷の結晶ができる現象。氷ですので、植物の表面は当然氷点下。気温は3~5℃以下になっていると言われています。21日の最低気温は1kmも離れていない市街地で10.7℃、果たしてそこまで冷え込むことがあるのでしょうか。

2010年1月には「東風平(八重瀬町)の低地で車の表面に霜が降りていた」という目撃談があり、写真も残されています。このときは那覇で最低気温9.1℃、21日と同じようによく晴れていて風が弱い日でした。

沖縄で氷がはりました!: GIS沖縄研究室
http://gis-okinawa.sblo.jp/article/34760034.html

沖縄で氷が新聞に: GIS沖縄研究室
http://gis-okinawa.sblo.jp/article/34770271.html



21日の夜も晴れて風が弱い条件になりそうだったので、実際に測ってみることにしました。温度ロガーなど良い道具がなかったので、よくある棒タイプの温度計を10分ごと(一部5分間隔)に確認して記録。

結果が下の図です。開始からずっと無風で気温はぐんぐん下がり、21時00分~21時20分に7.0℃を記録、その後は風が吹いて「暖かく」なりました。




辺戸の社宅や奥アメダス(気象庁)、辺戸岬(国立環境研究所)の観測値と比較したのが下の図。精気小屋付近は周囲よりも7~8℃も低い温度になっていました。辺戸岬は海のそばで標高も低いので暖かいです。



とても雑な計算になりますが、辺戸で10.7℃だった21日朝、精気小屋では4℃前後まで下がっていた可能性があり、霜が降りたのも頷ける状況だったようです。





精気小屋付近がなぜそこまで冷えるのかというと、地形に秘密があります。

地形図を見ると、精気小屋付近はヒゲのついた2本の等高線に囲まれています。これは、周りよりも低い、窪地(くぼち)であることを表しています。精気小屋は直径約200m、深さ約10mのお椀の中にあるのです。





北方向から撮影

冷たい空気は暖かい空気よりも重いので、風が弱いと冷気が低いところに溜まりやすくなります。お風呂を沸かしたときに、表面は熱いのに下の方は冷たかった、という経験はないでしょうか。それと同じことが大気でも起こるのです。

放射冷却現象」というのも冷え込みに大きく関わっています。地球からは宇宙に向かって常に熱(赤外線)が放出されているのですが、雲があると跳ね返されるのであまり冷えることはありません。晴れているとその熱がたくさん逃げてしまうので、地上の温度はぐっと下がります。

今回は「強い寒波の直後で気温がまだ低いときに」「高気圧に覆われて風が弱く、よく晴れていたので放射冷却現象が強くはたらき」「窪地に冷気が溜まった」ことで、精気小屋付近で霜が降りる条件が整ったのではと考えられます。



大石林山で霜が降りたときの天気図



霜ができるときの条件はだいたいわかったので、今後同様の状況になったときには写真などの記録を残し、気温・湿度などを測定してみたいです。



<参考>
気象庁 Japan Meteorological Agency
https://www.jma.go.jp/jma/index.html

国立環境研究所 辺戸岬 大気・エアロゾル観測ステーション ホームページ
http://www.nies.go.jp/asia/hedomisaki/home-j.html

Web地形断面図メーカー
http://ktgis.net/service/topoprofile/index.html



(博物館・服部)

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