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2024年01月23日

大石林山:イノシシは、カルスト地形の功労獣か?

大石林山では、遊歩道や森の中でしばしばイノシシが目撃されている。特にウリボウは可愛げなもので、何を恐れることなく歩道に飛び出したり、車の後を追っかけたりする。野性動物を目の当たりにできる絶好の地である。

しかし親イノシシは、ドキドキしながら木陰に潜み、危機に供え猪突猛進の体勢をとっているのではないかと想像したりする。なお、ガイドさんの話では、この山のイノシシは臆病だとのこと、ご安心を。


大石林山:イノシシは、カルスト地形の功労獣か?
写真1:イノシシの頭蓋の化石(港川遺跡産)

森の中へ入ると、落葉がかき分けられたり、要領の悪い人の畑のような場所を見かけることがある。山の事情に詳しいガイドによると、イノシシが餌を探して引っ掻き回した跡だという。なるほどよく見ると、ミミズを探すために土を掘り返したようで、食べ散らかしたカタツムリの殻なども散乱している。近くには、ケモノ道(獣道)や体に泥を塗りたくったヌタ場があり、憩いの場であることが容易に想像できる。

大石林山:イノシシは、カルスト地形の功労獣か?
写真2:鼻はショベル代わり?ミミズ探しに夢中のウリボー君

大型動物は、島嶼化と言って、大陸から渡来し、その後分離した島々の環境などの影響で形態に特異な進化が生じ、大型動物は小型化し、小型は大型化するという法則が知られている。

「リュウキュウイノシシ」は、その小型化した典型的な動物といわれているが、大石林山のイノシシが該当するかは定かでない。なぜならヤンバルで捕獲されているイノシシの大半は、豚との掛け合わせの「イノブタ」と言われているからである。

イノシシの餌あさりやヌタ場をみて気がついたことがある。豪雨の後、近県で「イノシシが県道脇の斜面を掘り返し落石が生じた」というニュースを耳にした。そう言えば、確かにエサやヌタ場はかき乱され土壌が浮いている。雨が降れば土壌は容易に流され、川や海に運ばれ汚染の原因となる。これは自然の理である。

一方、カルスト地域においては、土壌水による石灰岩の溶食作用の一つ「溶食貫通孔」を目にすることがある。本来は、地中に有るべき「貫通孔」が地表に露出していることがある。これは明らかに降水による土壌浸食が原因である。イノシシによる土壌の攪乱は、カルスト地域での土壌浸食に影響を与えているはずである。


大石林山:イノシシは、カルスト地形の功労獣か?
写真3:憩いのヌタ場では、土地がどんどん削られます

島への先住者であるイノシシの行動は、土壌流出を促す害獣とみるか、それとも「貫通孔」などを気づかせてくれるカルスト地形への功労獣と言うべきか悩むところである。

(博物館名誉館長 大城逸朗)



Posted by 大石林山 at 13:23│Comments(0)
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